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2018年度映画ベストテン [映画ベストテン]

「旅シネ」に寄稿した2018年度の映画ベストテンです。





1.『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』(ビー・ガン畢贛監督/中国)
2015年のベストテンにも挙げた『凱里ブルース』の監督の新作。記憶+夢=映画である、という監督の映画論を語るような作品。構造的にも前作を踏襲し、後半に驚異の60分1カット3D映像が用意されている。画とセリフの詩的表現が素晴らしく、男と女の出会いを描きつつ地球を意識する言葉が。(原題は『地球最后的夜晩』)今年公開が決まっているのですが、これなくしてこの年の映画は語れないくらいのインパクトなので。

2.『マンタレイ』(プッティポン・アルンペン監督/タイ)
タイ南部の港町。妻に逃げられた漁師の男は林の中に瀕死の謎の男を見つける。口のきけない男にトンチャイという名前をつけ共同生活を送っていたが…。ダブル(分身)の仕掛けを使い、故国を追われたロヒンギャ族の居場所を憂う。美しさと哀切をもった鎮魂歌。ベネチア・オリゾンティ作品賞。フィルメックスにて。

3.『象は静かに座っている』(フー・ボー胡波監督/中国)
河北省・石家荘。友人を庇い殺人の汚名を着せられたブーは満州里を目指し逃避行を試みる。彼と関わる行き場のない絶望を抱えた4人の一日を描く4時間の群像劇。『牯嶺街〜』の影響下にあると思われる作品だが、独特の演出で中国社会の負の連鎖と出口の見えない閉塞感が見事に表現されていた。残念なことに29歳の監督は作品完成の前に自死。ベルリン国際批評家連盟賞、金馬奨グランプリの知らせを聴く事はなかった。フィルメックスにて。

4.『夏の鳥』(クリスティーナ・ガジェゴ&シーロ・ゲーラ監督/コロンビア)
『彷徨える河』のシーロ・ゲーラ監督の新作。コロンビア北部グアヒラ。先住民族ワユーの氏族間の麻薬絡みの抗争を68年-80年に渡って5部構成で描く。まるで『仁義なき戦い』の様相を呈するが、カルテル抗争と違って、ワユーの精霊信仰や慣習に基づく行動原理が克明に描かれているのが白眉。ラテンビート映画祭にて。

5.『ゴッズ・オウン・カントリー』(フランシス・リー監督/イギリス)
ヨークシャーの家族経営の廃れた牧場を切り盛りする自暴自棄気味の青年ジョニーはルーマニアからの季節労働者ゲオルクに惹かれていく。昨年のLGBT映画も良作揃いで『君の名前で僕を呼んで』(ルカ・グァダニーノ監督/イタリア・アメリカ)、『傷』(ジョン・トレンゴーヴ監督/南アフリカ)など全て挙げたいところだが、主人公の孤独と切実さが伝わってくるこちらを。

6.『万引き家族』(是枝裕和監督/日本)
ある時代の家族像への憧憬。日本映画の数々の名作を思い起こさせる。「巨人の柴田」を知ってる世代は、その家族像が幻想になりつつあることに気づかされ、切なくなる。家族のあり方の是非を描きつつ、次世代に託してる感じも良かった。

7.『寝ても覚めても』(濱口竜介監督/日本)
恋人の麦(バク)が突然姿を消してから数年後、朝子は彼とそっくりな亮平と出会う。ある種の「ダブル(分身)」、あるいは「分人」モノ。3.11の前と後、信と不信、生と死、が2人の男を対立軸に重層的に描かれている。実験的だが今の現実感を見事に掬いとっている気がする。「ノルウェイの森」の読後感を思い出した。

8.『祈り』(1967年、テンギス・アブラゼ監督/ジョージア)
ジョージアの国民的作家V.ブシャヴェラの叙事詩をもとに19世紀の部族の対立を描き、文化・宗教が共存する希望・祈りを描く。詩的かつ精緻なモノクロ映像は宗教性を帯びていてカール・ドライヤーの作品を思わせる。

9.『快楽の漸進的横滑り』(1974年、アラン・ロブ=グリエ監督/フランス)
アラン・レネ監督『去年マリエンバートで』の脚本や『消しゴム』などで知られるヌーボー・ロマンの代表的作家ロブ=グリエ。彼が監督した映画作6品を集めたレトロスペクティヴが年末に開催された。1作をのぞき、本邦初公開作が並ぶ。今まで紹介されてこなかったことが不思議でならない面白さ。ヌーベルバーグとベルトルッチを結ぶミッシングリンクのようなトランティニャン主演の『ヨーロッパ横断特急』('66)『嘘をつく男』('68)も見逃せないが、真骨頂と思われるこの作品を推したい。

10.『オーファンズ・ブルース』(工藤梨花監督/日本)
記憶障害をもっているエマは、同じ孤児院で一緒だった友人から手紙を受け取ると、彼に会うために旅に出る。「内なるアジア」を旅するような感覚。近年気になるのは、日本の若手女性監督の驚くような才能の出現だ。『わたしたちの家』(清原惟監督)、『あみこ』(山中瑶子監督)、『夜明け』(広瀬奈々子監督)など甲乙つけがたいが、中でもこの作品の卓越した映画センスに驚かされた。PFFにて。

次点(入れ替え可能作品)
『轢き殺された羊』(ペマ・ツェテン監督/チベット・中国)
『ザ・リバー』(ミカエル・バイガジン監督/カザフスタン)
『アイカ』(セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督/ロシア)
『シベル』(チャーラ・ゼンジルシ+ギヨーム・ジョバネッティ監督/トルコ)
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(ナタウット・プーンピリヤ監督/タイ)
『同意 Raazi』(メーグナー・グルザール監督/インド)
『翡翠之城』(ミディ・ジー監督/台湾・ミャンマー)
『スリー・ビルボード』(マーティン・マクドナー監督/アメリカ)
『聖なる鹿殺し』(ヨルゴス・ランティモス監督/イギリス・アイルランド)
『RAW 少女のめざめ』(ジュリア・デュクル監督/フランス)
『赤色彗星倶楽部』(武井佑吏監督/日本)
『僕の帰る場所』(藤元明緒監督/日本・ミャンマー)
『川沿いのホテル』(ホン・サンス監督/韓国)
『少女ポニラー』(1983年、スラメット・ラハルジョ・ジャロット監督/インドネシア
『自由行』(応亮監督/香港・中国)

昨年は、国際映画祭の受賞作品の傾向を見ても日本を含むアジア映画の当たり年だったように見える。例年通り大半が映画祭で見たものになってしまったが、時代を反映してか「移民」がキーワードになった作品「ダブル・分身」の仕掛けを使った作品が多かった。トピックとしては『2001年宇宙の旅』70mm上映会、幼少時の頃から楽しませてくれた高畑勳監督と樹木希林さん、学生時代に多大な影響を受けたベルトルッチ監督の逝去が印象に残る。特集上映としては「東南アジア 巨匠から新鋭まで」「台湾巨匠傑作選」「中国映画祭〜電影2018」「イスラーム映画祭3」「ショート・ショート・フィルム・フェスティバル&アジア」「レインボーリール映画祭」「インディアン・シネマ・ウィーク」「PFF」「韓国インディペンデント映画特集」「山形ドキュメンタリー・フェスティバル in 東京」「東京国際映画祭」「フィルメックス」「アラン・ロブ=グリエ・レトロスペクティヴ」などに通った。

2017年度映画ベストテン

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