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19th Filmex [アジア総合]

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 第19回 東京フィルメックス

北野事務所の離脱で開催が危ぶまれていたフィルメックスでしたが、蓋を開けてみたら凄いラインナップでぶったまげました。自分が観たかったものが勢揃いでやって来た!という感じ。
実は、僕は第1回から通っているのですが(といっても全ての回を熱心に観た訳ではないです)、全作がグランプリ候補みたいな並びのコンペティションは初めてです。招待作品(ミンリャン、ホン・サンス、ギダイ、スタンリー・クワン、ジャンクー、メンドーサ、リティ・パン)も超級豪華だけど、今回ばかりは霞んでしまいそう。審査員にモーリー・スリヤ監督も参加、開会式もラフな形で始まったり、いろんな意味で「伝説の回」となった気がします。

個人的ベストは、映画的冒険してる作品が好きなので、『ロングデイズ・ジャーニー、』『マンタレイ』『引き裂かれた羊』『象は静かに座っている』あたりなのですが、社会派リアリズムなら『シベル』『アイカ』『自由行』『夜明け』も捨てがたい。今回は本当にレベルの高いコンペだった。




【2018年11月17日(土)】
今日から有楽町&日比谷で19th フィルメックス。1本目はサン・セバスチャンで新人監督賞取った奥山大史監督『僕はイエス様が嫌い』。そして開会式+ホン・サンス監督『川沿いのホテル』を見て来た。
たけし監督のCM が無くなり、毎度ムズムズしてた開会宣言無くなって、友人の家に招かれたようなラフさの開会式だった。ざっくばらんで良い。モーリー・スリヤ監督と賞予想できる一週間。 https://pic.twitter.com/hw0T0A6kwf


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●『僕はイエス様が嫌い』奥山大史監督

雪深い地方のミッション系の学校に転校してきた小5の結良(ユラ)。信者でもない彼は礼拝・お祈りなどの行事に戸惑う。ある日、彼の前に小さな神様が現れて…。ゆるい感じのコメディかと思って観ていたら、不覚にも泣かされてしまう。スタンダードサイズの拘りある画もいい。
舞台挨拶の様子。監督はストックホルム映画祭で延長滞在を要請され(→撮影賞受賞)、登壇できず、ビデオレターでの挨拶。チャド・マーレンさんのハイテンションに、劇中もこんな風かなと危惧したら、セリフなくてホッとした。 https://pic.twitter.com/d80JMw50TW


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●『川沿いのホテル』ホン・サンス監督

漢江沿いのホテルに宿泊する老詩人のコ・ヨンファンは別れた妻の間に出来た息子たちを呼び出す。「夢をみるんだ。死にそうな気がする」。別の部屋では傷ついた女たちが宿泊。詩人は彼女たちを天使と崇める。軽妙な会話劇から滲む男と女、人生と死の香り。監督の到達点に震えた。


【2018年11月18日(日)】
今日もフィルメックス2日目。もはや伝説化してる胡波監督『象は静かに座っている』。リティ・パン監督『名前のない墓』を観て来た。


●『象は静かに座っている』フー・ボー (胡波)監督

 →別枠で紹介してます。


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●『名前のない墓』リティ・パン監督

監督自身が剃髪し得度するシーンから始まり、クメール・ルージュ時代に命を落とした行方の知らない魂に焦点を当てる。旧人民の農民・軍人に当時の状況を語らせ、霊媒師にカメラを向ける。父親が乗り移った霊媒師と抱き合い、白い石を骨に見立てて供養する監督の姿にグッとくる。
旧人民(軍人・農民・幹部・革命家)、新人民(都市住民)で亡くなっ人、私のような生き残り、の三極でこの映画を作ったというリティ・パン監督。 https://pic.twitter.com/TQEHkwms2G


【2018年11月19日(月)】
フィルメックス3日目。蔡明亮監督『あなたの顔プッティポン・アルンペン監督『マンタレイ』ヨー・シュウホア(楊修華)監督『幻土』を観て来た。


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●『あなたの顔』ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督

時に無言、時に饒舌に語る12人の顔を捉える。滲み出るそれぞれの人生。小康が登場するのはお約束だが、かつて父親役で出演してた苗天に似た人が出ていたが、気のせいだろうか?(オリジナルは亡くなってる)ラストの長回し含め、まごうかたなきミンリャン印。音楽が意外にも坂本龍一。


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●『マンタレイ』プッティポン・アルンペン監督

タイ南部の港町。妻に逃げられた漁師は林の中に瀕死の男を見つけ助ける。口のきけない男にトンチャイという名前をつけ供同生活を送っていたが…。その地に埋まっている発光する石と無数の死体。ダブル(分身)の仕掛けを使い、ロヒンギャの居場所を憂う。美しさと哀切をもった鎮魂歌。
これは素晴らしかった。アピチャッポンの影響を指摘されたが、骨格はプラプダー的な気がする。南部の不穏さも描かれていた。ロヒンギャの一連の事件とモエイ川やアンダマン海での経験が元になっているというプッティポン監督。 https://pic.twitter.com/RKw4UL3tgb
漁師と謎の男の艶めかしい切り返しショットを見るにつけ、彼らが同性愛関係にあることは容易に想像できる。謎の男には唖者、モスリム、同性愛者というマイノリティの属性も託されていて、寓話がロヒンギャだけにとどまっていないことは気に留めておきたい。
https://pic.twitter.com/NB2lXp983p


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●『幻土』ヨー・シュウホァ (楊修華)監督

刑事ロクは埋め立て工事現場で働いていた移民・王必成の行方を捜している。入り浸っていたネットカフェ、彼と親しかったバングラデシュ人のアジットに接触を図るが…。ノワール映画の枠組みを借りてシンガポールのアイデンティティを探る。インソムニア状態、砂浜巡での海外旅行など面白い。
ヨー・シュウホァ監督とラサール芸術大で教鞭をとられている撮影の浦田秀穂氏。ロケハンに8カ月をかけ、見たこともないシンガポールの夜景を撮る事を要請された。 https://pic.twitter.com/Ll2bWvMxuJ


【2018年11月20日(火)】
フィルメックス4日目。何蔚庭監督『幸福城市』ペマ・ツェデン監督『轢き殺された羊』、アミール・ナデリ監督『マジック・ランタン』観てきた。


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●『幸福城市』ホー・ウィディン (何蔚庭)監督

2056年、高度に管理されたディストピア社会。元刑事の張冬陵は妻との関係に悩み続けていた。人生の決着をつけるべく行動に出る。近未来、現代、過去と遡及していく3部構成で主人公の壮絶な人生が語られる。五月天の人の汚れっぷりと、少年時代の『瞼の母』的展開にはちょっと驚いた。
現像所に余っていたフジフィルムで撮ったと言いマレーシア出身・在台湾のホー・ウィディン監督。フランス人カメラマンの為かアラ役のルイーズさんも周囲と馴染んでいた。英題はポール・オースターから。 https://pic.twitter.com/wlzchVZaqG


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●『轢き殺された羊』ペマツェテン(Pema Tseden)

チベット北部・ココシリ。トラックの運転手ジンパは羊を轢き殺した道中で、自分と同じ名前のカムの男を乗せる。20年前に父親を殺した人物を殺しにサナクへ行くという。西部劇的ユーモア、Wカーワイ的スタイリッシュさを持った画が素晴らしく、ラストの剣を抜く夢想シーンは圧巻。
監督曰く、ジンパとは「悔い改めて施しをする」という意味があるそう。羊を轢き殺したジンパ、人を殺しに行くジンパ、かつて人を殺しマニ車を持ち毎日寺へ行く老人。「私の夢はあなたの夢になる」。贖罪と魂の救済をテーマにしてると思うが…
実はトラック運転手が仇討ちをしに行く超本人で、(カムの男は彼の想像の産物、ダブル)羊を轢き殺したことで改心した、という風にも読めなくもない。また、ペマ監督のことだから、20年前の父親殺しの怨恨に何か政治的メタファーを重ねているような気がしなくもない。もう一度観てみたい。
ペマ監督と録音技師さんのトークの様子。 https://pic.twitter.com/QDAOgqRERc


●『マジック・ランタン』アミール・ナデリ監督

映像技士のミッチは劇場のデジタル化に伴い、最後のフィルム上映を行う。映画内の映画(虚構)が映画技師の現実にリンクし、さらに見てる側の映画のリアリズムへ。ラジオスターの悲劇ではないが、デジタルはフィルム・スターを殺す。いや、すでに亡くなっていたと言うべきか。



【2018年11月21日(水)】
フィルメックス5日目。スタンリー・クワン(關錦鵬)監督『8人の女と1つの舞台』、チャーラ・ゼンジルシ+ギヨーム・ジョバネッティ監督『ジベル』、これから広瀬奈々子監督『夜明け』。『シベル』、あまり期待してなかったけど、これまた凄い作品だった。大穴かもしれない。


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●『8人の女と1つの舞台』スタンリー・クワン(關錦鵬)監督

久しぶりに舞台に復帰する秀霊と、初共演の人気女優の玉紋。2人には映画「ルージュ事件」で役を奪いあった因縁があった。舞台が完成するまでを、2人の周辺にいる女たちとともに描く内幕もの。監督の過去作がそれとなく散りばめられている気がする。秀霊の息子は「藍宇」とか。


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●『シベル』チャーラ・ゼンジルジ、ギヨーム・ジョヴァネッティ 監督

トルコ東北部。唖者のシベルは山間部で通用する口笛でしか意思表示できない。銃で狼を撃ちとめ、彼女を小馬鹿にする村民に認められたいと思っている。ある日、見知らぬ男と遭遇してから彼女の内面は大きく揺さぶられる。緊張感、心理描写が素晴らしい。花嫁の岩、ナーリンの挿話も印象的。
言語に興味を持っているという監督お2人と、演じる動きに合わせて口笛を練習したというシベル役のダルニアさん。テロリズムからナショナリズムの話も。 https://pic.twitter.com/w2LghuL0KA


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●『夜明け』広瀬奈々子監督

川辺で倒れている青年を助けた初老の哲郎(小林薫)は、自ら経営する木工所で面倒を見ようとする。青年はシンイチと偽名を使うが、それは亡くなった息子と同じ名前だった。老齢な映画作家が作ったような風格を持ったデビュー作。狂気とナイーブさ持った演技が光る柳楽優弥の代表作になりそう。
少年のような風貌の監督。311後、社会に蔓延した絆や縛られる事に違和感をもったのが着想のきっかけと語る。 https://pic.twitter.com/yZOzrngAbk


【2018年11月22日(木)】
フィルメックス6日目。応亮監督『自由行』、ビーガン(畢贛)監督『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』を観てきた。『ロングデイズ・ジャーニー』、期待通り素晴らしかった。詩的世界に酔いしれた。


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●『自由行』イン・リャン(応亮)監督

香港在住の映画監督・楊樞は夫と子と共に映画祭出席のため高雄を訪れるが、もう一つの目的があった。それは中国大陸・自貢に住む老いた母親と落ち合う事だった。亡命を余儀なくされた応亮監督の経験が投影された秀作。彼の作品群を観てきた者は涙を禁じえない。 P.テオ、素晴らしかった。
家族と香港の市民権を得たという久しぶりの応亮監督の登壇。劇中で名前を変えて触れられていたのは『私には言いたいことがある』(12)と、香港インディペンデント映画祭でやった『九月二十八日・晴れ』(16)。
『 家鴨を背負った少年』(05)を撮った監督がこういう人生を送るとは…。 https://pic.twitter.com/smFPWhuZhj


●『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』ビー・ガン(畢贛)監督

→別枠で書いてます。


【2018年11月23日(金)】
フィルメックス7日目。セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督『アイカ』、アモス・ギタイ監督『ガザの友人への手紙』『エルサレムの路面電車』を観て来た。『アイカ』も凄まじかったな。ラストでやられてしまった感じ。
フィルメックス、これでコンペを全部観たんだけど、この中からグランプリを選ぶなんて…。贅沢というか、狂気じみてるというか。去年みたく4作同時グランプリとかもアリなんじゃ…。無いか。


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●『アイカ』セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督

モスクワで働くキルギス人のアイカは、子供を出産したばかりの身体で肉体労働に復帰する。血や母乳を滴らせながら働こうとする彼女に、嫌悪感と疑問が湧くが、徐々にその理由が明らかになって行く。終始そのグロテスクに目を覆いたくなるが、ラストシーンで全てが報われた気がした。


●『ガザの友人への手紙』アモス・ギタイ監督

カミュの「ドイツ人の友への手紙」('43)をヒントにイスラエルの政治状況を憂えた作品。若い世代と上の世代(監督自身も出演)がリレー形式でパレスチナ抵抗詩人のマフムード・ダルウィーシュ「他者を思え」、エミール・ハビーなどの文章を引用して朗読する。ガザの映像も。


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●『エルサレムの路面電車』アモス・ギタイ監督

東西に走るトラムに乗る多様な民族・属性の人々を捉えた作品。音楽、言語、顔。歌う超正統派、常駐してる高圧的な警備員、伊語で聖書の一説を語る男、フローベルとマクシム・デュ=カンの旅行記を息子に読むM.アマリック、ハーモニカを吹く兵士と恋人…などシーン多数。
ラビン首相が生きていたらもう少し状況は変わっていたかもしれないが、将来は上手く行くのではないかという楽観的な思いで作った、と語るアモス・ギタイ監督。 https://pic.twitter.com/QuAtaIj3x3



【2018年11月24日(土)】
フィルメックス最終日。田壮壮監督『盗馬賊』(86)、恵比寿の写真美術館に移動して井上春生監督『幻をみる人 京都の吉増剛造』、有楽町に戻って閉会式+ 賈樟柯監督『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト』、メンドーサ監督『アルファ、殺しの権利』。参加された皆さんお疲れ様でした。


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●『盗馬賊』(1986)田壮壮監督

1923年、チベット、夏。家族を養うために馬泥棒を繰り返す遊牧民ローブル。ある時、回族から奪った装飾品を寺に奉納したことがばれ、部落を追放される。我が子タシを失い、過酷な冬を過ごす夫婦に再び生命が宿る。部落に戻ることを懇願するが、部落周辺は疫病が蔓延していた…。
鳥葬、巨大タンカの開帳、タール寺の仮面(チャム)劇など興味深い映像。北京語のアテレコがいまいち感。上映前説明があったようだが(ぎりぎり入場で聴いてない)自分が持っているDVDも北京語だったので、チベット語版自体あるのかどうか?西安映画制作所は『赤いコーリャン』『古井戸』を制作した所。


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●『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト』ジャ・ジャンクー(賈樟柯)監督

’01年、大同。ヤクザ稼業の斌とその恋人巧巧。抗争に巻き込まれた斌を助けようと発砲した巧は、懲役5年の刑に。出所した彼女は斌の行方を捜すが…。『長江哀歌』の舞台になった奉節から新疆、そして再び大同へ。時代に翻弄される男女の流浪を描く。
これは面白かった。降旗・北野映画を思い起こす所もあるけど、奉節で行方不明の夫を捜す『長江哀歌』とかなり相似形・パロディになっていたり(趙濤の着てる服、同じでは?)、大同の鉱山の荒涼とした風景も(韓三明を思い出す)不思議な感傷をもたらす。
『帰れない二人』(配給ビターズ・エンド)というタイトルで公開予定。


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●『アルファ、殺しの権利』ブリランテ・メンドーサ監督

麻薬撲滅運動中のマニラ。情報班の警官モイセスはエライジャを使って麻薬組織の内偵をさせ、ついにSWATを動員して検挙にあたる。だが、モイセスは裏で押収物を横流ししていた。バレそうになった彼は…。伝書鳩と2組の家族の対比。スラムや検挙シーンの臨場感はさすが。
「死亡者は20人では?」「いや10人だ、そこのところきちんと報道してくれ」という数の倫理の警察幹部。ラストの表彰式・警察官の行進など、けっこう際どい表現なのでは?さらに「事実の類似点は偶然である」と皮肉る。伝書鳩のシーンは既視感があるが、メンドーサ監督のどの作品だったか。



【授賞結果】
●最優秀作品賞
『アイカ』
●審査員特別賞
『轢き殺された羊』
●スペシャルメンション
『夜明け』
●学生審査員賞
『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』
●観客賞
『コンプリシティ』

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