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シアター・プノンペン [カンボジア]


シアター・プノンペン [DVD]

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  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • メディア: DVD



プノンペンに暮らす女子大生のソポンは、病を患う母親、厳格な軍人の父、口うるさい弟との息苦しい生活にうんざりしていた。授業をさぼって明け方まで遊び回り、父が決めた将軍の息子との見合い話から逃げ回る日々。ある夜、ボーイフレンドとはぐれた彼女は、廃墟の映画館に迷い込む。スクリーンには自分とそっくりの少女が映し出されており、壁の古いポスターにはかつて女優だった母の姿があった。映画館の主人で映画技師のソカと対面した彼女は、1974年に母が主演した『長い家路』という映画制作にまつわる意外な顛末を聴かされることになる。
 
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『ゴールデン・スランバーズ』(2011年/ダヴィ・チュウ監督)というドキュメンタリーによれば、カンボジア映画の最盛期は1970年〜75年頃で、これはロン・ノルがクーデターを起こし、クメール・ルージュが首都プノンペンを制圧するまでの期間と重なるという。つまり、内戦下で映画が量産されたことになる。意外なことだが、戦火が広がるつれ、住民は街から出られず、映画に娯楽を求めたという理由らしい。

本作『シアター・プノンペン』の中に出てくる『長い家路』という架空の映画は1974年に製作されたという設定で、まさにこの辺りの背景を描いている。偶然から女子大生ソポンと劇場主のソカが出会い、『長い家路』の失われてしまった 最終巻を自分たちで撮り直そうと意気投合する。ソポンは思う。完成したら、かつて主演女優だった病気の母親ソテアを元気づけることができるかもしれない。一方、この映画製作に携わったソカはソポンにソテアの面影を見出していた。彼は40年間ソテアのことをずっと想い続けていたのだ。

撮影が進むにつれ、ソポンの母親と父親、そしてソカと彼の実兄の複雑な過去が明らかになってくる。クメール・ルージュによって引き裂かれたソカとソテアの悲恋が語られるが、終盤、捻りのきいた脚本に驚かされる。そこには「記憶・歴史の修正はあってはならない」という監督の歴史観が込められているようにも思う。73年生まれの女性監督は、クメール・ルージュ時代に幼少期を過ごしており、その時代を全く知らない若い世代との架け橋になる存在だ。また、母親役を演じてるのは往年の大女優ディ・サヴェット(『怪奇ヘビ男』1970年/ティ・リム・クゥン監督)。劇中映画は現実とオーバーラップする仕掛けだ。

この映画はカンボジア本国で興行収入の歴代1位のヒットになったという。悲劇の歴史を直視できるような余裕が生まれて来たからだろうか。(ちなみに、日本で知られるリティ・パニュ監督の作品はほとんど公開されていない)一方で、失われたと思われた往年のカンボジア映画の発見や整備も進んでいるようである。『12人姉妹』(1968年 リー・ブン・イム監督)という作品がアメリカで発見、日本でデジタル化され、先頃、恵比寿映像祭や大阪アジアン映画祭で上映された。情感あふれる特撮を駆使した貴種流離譚ともいうべきファンタジーに心踊らされた。こういった状況を見ると、新たなカンボジア映画の黄金時代が始まりつつあるのではないかと期待が高まる。(★★★☆)

ソト・クォーリーカー監督は、「アジア三面鏡」というプロジェクトに参加予定で、トンレサップ川にかかる日本・カンボジア友好橋(1966年に完成したが、内戦で爆破され、94年に修復が完了した)にまつわる中編を準備中とのこと。こちらも完成が楽しみだ。


初出「旅シネ」より





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