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スタンリーのお弁当箱 [インド・南アジア]


スタンリーのお弁当箱 [DVD]

スタンリーのお弁当箱 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • メディア: DVD



学校に弁当を持って来られない少年の話である。弁当というのは生徒の家庭環境や経済状況を如実に表してしまう残酷さをもっている。思い出すのは、中学時代、日の丸弁当を持って来ていたクラスメイトのことだ。たまにウインナや玉子焼きが入っていることもあったが、自分で弁当を作っていると打ち明けてくれた。80年代の日本は、そこそこ裕福になっていて、ご飯に梅干し一つの日の丸弁当はもはや絶滅危惧種か天然記念物だった。彼はいつも空咳をしていて、ときどきイジメにあっていた。

主人公のスタンリーは話好きの陽気な少年で、まるで映画の中のシャー・ルク・カーンのように饒舌なのだが、それがカラ元気であるのが次第にわかってくる。 昼食時、水道水で空腹を満たすスタンリーに、仲の良いクラスメイトたちがさりげなく弁当を分け与える友情にホロリとさせられる。仲間の一人にクラスで一番 大きい弁当箱を持参するアマン・メヘラという金持ちの生徒がいる。日本の漫画やドラマでは金持ちの子は決まって意地悪で嫌みな存在として描かれるのが相場だが、ここでは頼もしい存在として描かれていて、その辺がインドらしいなと思った。

一方、子供たちを困らせる不条理な存在として、食い意地の張った国語教師ヴァルマーが登場する。自分の弁当を用意せず、同僚教師たちの弁当を盗み食いしたり、お裾分けで過ごそうとするケチで嫌みな男だ。なぜ彼が教師の身でありながらそんな行為に及ぶのか深くは追求されない。そんなミスター不条理が目をつけ たのが、金持ち生徒アマン・メヘラの持ってくる美味しそうな特大弁当だった。その弁当目当てに彼らを追いかけ回すのだが、生徒たちはスタンリーにあげたいのでうまく切りかわして行く。ヴァルマーと生徒の知恵比べの攻防が実に可笑しい。その憎々しい教師を演じているのが監督のアモール・グプテだと知ってびっ くり。俳優としてなかなかのキャラの持ち主だ。そして、愛嬌あるスタンリー役のパルソー君が、監督の実子と知って2度びっくりである。

従来のボリウッド映画とは一線を画す映画製作のスタイルも興味深い。舞台になっているのは監督も通ったというムンバイに実在するホーリー・ファミリー校。 そこで毎週土曜日の午前中に4時間のワークショップが開かれ、一年半に及ぶセッションでこの映画は作られたという。生徒たちは映画撮影だと知らされず、脚本を読むことなく、即興的に演技をしていった。そんな方法論からなのか、子供たちの表情豊かで伸び伸びとした演技が素晴らしい。スタンリーが弁当を持って来られない理由は、ラストで明かされる。インドや日本に関わらず、子供たちの発する無言のメッセージに、少しでも想像力を働かすことのできる社会であって ほしいと願う。ちなみに日の丸弁当を持参して来たクラスメイトは、大型トラックの運転手になって高給を稼いでいるらしい、と風の噂で聞いた。

(初出「旅シネ」)


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