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ソング・オブ・ラホール [インド・南アジア]


ソング・オブ・ラホール

ソング・オブ・ラホール

  • アーティスト: ザ・サッチャル・アンサンブル,マイケル・レオンハート,マイケル・レオンハート,ファイズ・アハマド・ファイズ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2016/07/27
  • メディア: CD




『ソング・オブ・ラホール』

「ロリウッド」と呼ばれるパキスタン映画産業の中心地ラホール。数々の映画が作られるとともに、伝統音楽を使った映画音楽も数多く作られた。しかし、1970年代後半に始まるイスラーム化の波、90年代に台頭してきたタリバーンによる歌舞音曲の禁止によって映画界は衰退。音楽家たちはウェイターやリクシャ運転手に転職を余儀なくされる。そんな中、細々と活動を続けていた音楽家たちが伝統音楽再生のために立ち上がった。イギリスで成功した実業家イッザト・マジードが私財を投じて音楽スタジオを作ったのがきっかけだった。スタジオは完成し、集った音楽家たちはサッチャル・ジャズ・アンサンブルを結成した。
                     
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デイブ・ブルーベックの有名曲「テイク・ファイヴ」をインド音楽風にアレンジされたyoutube動画がツイートのタイムライン上に流れてきたのは、半年ほど前だったろうか。 そのときは「こういうのもありだな」と特に驚くこともなかった。というのも、インド音楽とジャズの融合はギタリストのジョン・マクラフリンやジョー・ハリオット=ジョン・メイヤーの『インド・ジャズ組曲』などで耳に馴染んでいたし、一時期、その手の音楽の収集に凝っていたからだ。その頃にくらべ、SNSや動画サイトによって情報は飛び交い、世界はますます狭くなっているのだから、こういう試みはあって当然だと思っていた。

だが、その動画の背後にはもっと深い事情があった。本作はその動画の演奏者、サッチャル・ジャズ・アンサンブルというグループを追ったドキュメンタリーだ。まず、彼らはインドではなく、パキスタン・ラホール出身のミュージシャンたちの集まりだった。1977年のハック陸軍参謀長によるクーデター以降、国家政策の”イスラーム化”により、歌舞曲は否定され、映画はもとより、パキスタンの伝統音楽は制限され衰退していった。原理主義的傾向はいっそう拍車をかけ、ほとんど瀕死の状態にあった。 サッチャル・ジャズ・アンサンブルが結成されたのは、音楽の存亡の危機を世界に訴え、その存在感を示すことにあった。「テイク・ファイヴ」動画公開によって、それは瞬く間に世界に広がって大きな話題となり、ついにジャズの聖地ニューヨーク公演招待にまでに発展する。

映画の最大の見所は、このニューヨーク公演のリハーサル風景だ。共演するウィントン・マルサリスの楽団に暖かく迎えられた一行だったが、4日間で18曲の音合わせをしなくてはならない。サッチャルのメンバーは全員が西洋音楽の教育を受けてるわけではなく、渡米前に楽譜を用意し練習してきたが、思惑通りにはいかない。それでも「音楽は世界の共通言語」だけあって、タブラなどのリズム隊やバーンスリーというパキスタンのフルートに似た楽器は見事に馴染んで行く。しかし、肝心の「テイク・ファイブ」演奏で問題が発生する。キー(調)の変更で、主旋律を奏でるはずのシタールが実力不足でソロを弾けないのだ。公演2日前で、なんと、そのシタール奏者は解雇されてしまう。柔和だったウィントン・マルサリスの顔が曇る。公演は大丈夫なのか…。

パキスタンとアメリカ、文化のパワーバランスも否が応でも見せつけられる。だが、結果的にそんなことも忘れさせてしまうアンサンブルを聴かせてくれる。正直言うと、82分という尺は物足りない。もっと彼らの演奏を見せてくれても良かった。同じような思いを抱いた人は、来日公演も予定されているらしいので、そちらに足を運んで生の音に接するのもいいかもしれない。(★★★☆)

初出「旅シネ」より


2015年/アメリカ (ウルドゥー語/パンジャビー語/英語)
監督・製作:シャルミーン・ウベード=チナーイ、アンディ・ショーケン
出演:サッチャル・ジャズ・アンサンブル、ジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラwith ウィントン・マルサリス
配給: サンリス
上映時間:82分
公開: 8月13日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
公式サイト:http://senlis.co.jp/song-of-lahore/

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