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ラサへの歩き方 [チベット・ビルマ]


ラサへの歩き方 祈りの2400km [DVD]

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『ラサへの歩き方 祈りの2400km』チャン・ヤン(張楊)監督

かれこれ20年ほど前になるが、陸路で青海省ゴルムドから州都ラサへ、そしてテングリー経由でネパールへ抜けるコースを旅したことがあった。ラサのヂョカン寺周辺では各地から集まったと思われる巡礼者でごった返し、人ごみの中を五体投地している人々の姿を見かけた。またラサからエベレスト方面へ向かう幹線道路でも、五体投地をしながら移動する2〜3人くらいのグループをよく見かけた。その姿は、全身埃まみれで過酷そのもの。みな険しい顔をしていたし、特別な修験者のように映った。一体、彼らはどこから来て、どこへ向かうのか。おんぼろのランドクルーザーの車内で一瞬考えるが、その思いはすぐに流れる景色にかき消されていった。

この映画で描かれる巡礼は僕がイメージとして持っていたものとはかなり違っていた。11人の村人たちはどこか和気あいあいとした家族旅行をしているようにも見える。農耕用のトラクターに荷車をつけ、テントや寝具、ストーブや食料などを積んでいく。時々休憩して暖かいバター茶を飲む。夜は大きなテントの中で、体を寄せ合って眠る。きれいに整備されたアスファルトの道路のせいか、本来なら自分の身長分しか進まないはずの五体投地も、なんだか滑るようにスライディングして進み、ちょっとズルしてる?ように見えた。

案の定、ラウという町で、口うるさい老人が登場し、 五体投地のやり方に注意が入った。 「歩数が多すぎる、額を地面につけろ」だの、カム地方のファッションである頭の赤い飾りをつけていた青年には、「それを付けてやってはダメだ」と言う具合に。今どきの五体投地はこうなのだ、と一般化できないが、おそらく、五体投地や巡礼の方法も、時代とともに少しずつ変化しているのだろう。また、カム地方は信仰心の厚い人が多く、ラサはもちろんカイラスまで巡礼にいく強者が多いそうだが、巡礼の仕方は地方によって異なるのかもしれない。

彼らがなぜ巡礼の旅に出るのか、この映画は余すことなく伝えてくれる。フィクションだが、役者たちは実際にこの地方に住む村人たちで、彼ら自身を演じている。 それは、リティ・パニュ監督の作品を思い出すし、ラオール・ウォルシュ監督の『ビッグ・トレイル』(‘30)のようなドキュメンタリー性を帯びている。チャン・ヤン(張楊)監督は基本的な設定だけを作り、それに見合う人を見つけてキャスティングしていったという。物語は、自然や文明の脅威にもさらされながら、時に出産したり、出会いと別れを経験したりしながら、チベット人の死生観を克明に描く。特に大仰な表現は見られず、実に淡々としている。それは、中国という枠組みにあるチベット人たちへの監督の節度ある距離感にも感じる。本来、このコースの巡礼には8ヶ月を要するらしいが、撮影には1年という歳月を費やしたという。映画製作自体が「祈り」にも似たスケールの大きな作品だ。(★★★★)

初出「旅シネ」より


2016年/中国 
監督:チャン・ヤン(張楊)
配給: ムヴィオラ
上映時間:118分
公開:7月23日(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト:http://moviola.jp/lhasa

【ストーリー】
チベット自治州・マルカム県プラ村。ニマの父親が亡くなってからまだ四十九日が明けず、法事が行われている。ニマの叔父のヤンペルは、死ぬ前に聖地ラサに行きたいと願っていた。ニマは叔父の願いを叶えるため、巡礼に行く決意をする。
ニマとヤンペルが巡礼すると聞いて、私も連れていって欲しいと同行を願い出る村人たち。妊婦や幼い少女までが集い、巡礼のメンバーは11人になった。トラクターに荷車をつけ、テントや夜具、ストーヴ、食料などを乗せ、リーダーのニマが運転して先導する。妊婦と老齢のヤンペルをのぞくメンバーは「五体投地」でラサを目指す。さらに聖なる山カイラスへ。その行程は2400kmにのぼる。


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