So-net無料ブログ作成

2015年度映画ベストテン [映画ベストテン]

「旅シネ」に寄稿した2015年度の映画ベストテンです。
  
                  


1.神々のたそがれ(アレクセイ・ゲルマン監督/ロシア)
『フルスタリョフ、車を!』で知られる監督の遺作。ストルガツキー兄弟の原作からインスパイアされたSFだが、地球より800年遅れたある惑星の混乱した中世時代をルマータという男(神)が俯瞰する。ぬかるみ・死体・糞尿の中を這いずり回るカメラ。その圧倒的な熱量に度肝を抜かれる。たぶんカラーだったら吐いてたかも。監督は案外タルコフスキーの『アンドレ・ルブリョフ』を目指したのかもしれない。

2.凱里ブルース(畢贛ビー・ガン監督/中国)
貴州省・凱里の診療所で働く過去のある男が小学生の甥っ子の行方を探しに鎮遠の街に迷い込む。そこは過去と未来が混濁したような場所だった。圧巻の40分に渡る長回しテイク。その詩情と映画的冒険にシビれる。ジャ・ジャンクーに継ぐ中国の新たな才能かも。中国インディペンデント映画祭にて。

3.夜間飛行(イ=ソン・ヒイル監督/韓国)
ゲイを自覚する優等生の高校生と貧困家庭の不良少年の愛憎半ばの友情関係を描きながら、いじめや格差社会など韓国社会の暗部を鋭くえぐる。クライマックスは『日本侠客伝』の高倉健かと思うくらいに圧倒された。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭にて。

4.雪の轍(ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督/トルコ)
カッパドキアのホテルを所有する地主の男と若い妻。「善意は地獄の道へ通じる」というアフォリズムを基に世界を俯瞰する。昨年の収穫の一つはジェイラン監督作品に出会えたこと。雪景色、滋味ある人間描写と会話劇に心酔。特集上映で観た『冬の街』、『昔々、アナトリア』も秀作だった。                                                                   
5.黒衣の刺客(候孝賢監督/台湾)
唐時代末期の地方の政変を描いているが、今の台湾の政治状況とオーバーラップ。シルクロードを思わせる胡旋舞から日本の雅楽まで。候孝賢監督の辺境論ともいえそう。唐文化が色濃く残る京都の寺をロケ地にしたり、完璧なまでの映像美に酔いしれる。

6.ザ・トライブ(ミロスラヴ・スラボシュビツキー監督/ウクライナ)
聾啞の寄宿学校で繰り広げられる仁義なき戦い。出演者は全員ろう者。字幕もなし。意味を汲み取ろうとするので観る側も真剣に注視する。ウクライナの政治状況も彷彿とさせ、噂通り問題作だった。

7.セッション(デミアン・チャゼル監督/アメリカ)
アメリカ映画は『バードマン』や『フォックスキャッチャー』を含め、日本映画で言う “芸道もの”“師弟もの”がなぜか際立っていた。SとMか?といわんばかりの危うい共依存関係。それを乗り超えたものだけが手に出来る地平。芸道に生きる身として(?)グサリと胸に刺さる。

8.女神は二度微笑む (スジョイ・ゴーシュ監督/インド)
久しぶりに映画で味わった大どんでん返しと極上のミステリ。コルカタの街並みも良かった。

9. 黒い雌鳥(ミン・バハドゥル・バム監督/ネパール)
姉から預かった雌鶏を父親に売られてしまった不可触民の少年。雌鶏を取り戻すために友達と危険な旅に出る。カーストの違う少年の友情とネパール内戦下の政治状況を活写した秀作。ネパール版『生まれてはみたけれど』。フィルメックスにて。

10. GIE(リリ・リザ監督/インドネシア)
政治運動のリーダー、ジャーナリストとして生き、27才の若さで亡くなった中華系インドネシア人スー・ホッ・ギーの生涯を描いた作品。2005年の作品なのだが、あまりに素晴らしいのでここにねじ込むことに。こんな傑作が一部の映画祭で上映されただけで終わるのはもったいない。「現代アジアの作家たち 福岡市総合図書館コレクション」より。

次点.(入れ替え可能作品。こちらも傑作ぞろい!)
コードネームは孫中山(易智言イー・ツーイェン監督/台湾)
酔生夢死(張作驥チャン・ツォーチ監督/台湾)
タルロ(ペマ・ツェテン監督/中国・チベット)
消失点(ジャッカワーン・ニンタムロン監督/タイ)
サービス(ブリランテ・メンドーサ監督/フィリピン)
恋人たち(橋口亮輔監督/日本)
国際市場で逢いましょう(ユン・ジェギュン監督/韓国)
KANO〜海の向こうの甲子園(馬志翔監督/台湾)

昨年はアジア系映画特集が思いのほかたくさんあり、条件反射で通ってしまう。(もうそろそろほどほどにしたいんですが)「現代アジア映画の作家たち 福岡市総合図書館コレクションより」、「第10回大阪アジアン映画祭」、「1960・70年代日韓名作映画祭」「SOUND OF SILENCE〜中国無声映画と音楽の会」「トルコ映画の巨匠:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン映画祭」「第28東京国際映画祭」「第16フィルメックス」「第5回中国インディペンデント映画祭」「韓国映画1934-1959 創造と開花」。新作も大豊作で、ベスト10に絞り込むのが歯がゆいくらいだ。フィルメックスで観た『最愛の子』『山河ノスタルジー』も秀作だが今年公開されるので見送ることに。

初出「旅シネ」より


2016年度映画ベストテン
2014年度映画ベストテン


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。