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16th FILMeX [アジア総合・日本]

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第16回フィルメックス(Nov.21- 29 2015)


今回のラインナップは驚愕ものだった。
侯孝賢&蔡明亮の特集、ピエール・エテックス特集、賈樟柯やピーター・チャンの新作、ペマ・ツェテン、張作驥などコンペの充実・豊作ぶり。まるでグランド・フィナーレ(最終回)のようなプログラムだった。来年、ちゃんと開催されるのだろうか??

以下、ツイートのまとめと加筆。



【2015年11月23日(月・祝)】

●『大恋愛』(69)ピエール・エテックス監督(フランス

工場経営者の娘フローレンスの家に婿入りしたピエール。跡継ぎとして働くがそこに美人秘書が現れて‥。モンティパイソンほど辛辣ではなく、Mrビーンほどふざけてないおしゃれ妄想コメディ。10人花嫁、何でも2分割、片づけギャルソン、滑走するベッドに乗ってみたい。

●『わたしの坊や』ジャンナ・イサエヴァ監督(カザフスタン)

脳の血腫を手術しないと命がないと告げられた少年ラヤンは、恨みを持つ人物に次々と復讐する。彼は事故で母親を亡くしており、その真相が徐々に明らかに。母親を思う幻想的なシーンと干上がったアラル海や船の残骸のコントラスト。虚空を見つめる少年の独特の顔つきが印象に残る。

●『最愛の子』ピーター・チャン監督(中国・香港)☆

文軍と曉娟は離婚後も協力して3歳の息子ポンを育てていたが、ある日何者かに誘拐される。3年間の地を這うような捜索の末、安徽省の農村でポンを確保する。誘拐犯の夫は既に病気で死んでおり、李紅琴 という母親は事実を知らなかったと言い張る。もう一人の娘も施設に送られる。
紅琴は娘は誘拐ではなく拾われた子供だと主張し、知り合った高弁護士と訴えを起こすが…。実際にあった誘拐事件をモデルに中国社会の暗部を抉りだす。人物描写と力強い演出は見事というほかない。ラストのドキュ部分は余計だと思った。窓から外を眺める女の子で終わってほしかった。


【2015年11月24日(火)】


●『白い光の闇』ジャヤスンダラ監督(スリランカ)

医師をめざしながらも出家した僧侶は「あらゆる神は死神の統率下にある」と先輩僧に教えられる。臓器提供オフィスでドナーを集める男、その男と手を組むジキルとハイドのような二面性を持つ色情狂な医師。経済原理の中で医師(死神)が支配する生死と自然の摂理に基づく仏教観の相克。

●『黒い雌鶏』ミン・バハドゥル・バム監督(ネパール) ☆

不可触民に属するプラカシュ少年は姉からプレゼントされた白い雌鳥「カリシュマ」を大事に育てていたが、父親に売られてしまう。村長の孫で親友のキランと策を練って取り戻すことに成功する。別な鶏に見せかけようと羽根を黒く塗って誤摩化すが、ばれてしまう。そして雌鶏は仏教徒の娘の結婚祝いで遠い村セログへ渡ってしまう。二人は雌鶏を取り戻すために危険な旅に出る。
カーストの違う少年の友情と01年頃のネパール内戦下の政治状況を活写した秀作。監督の故郷の村人を使った素朴な演技と印象的なシーン。雌鶏の名前「カリシュマ」は女優の名前で移動映画の挿話もあった。プラカシュは母親が亡くなって以来白い服を着て喪に服しているようだ。プラカシュ(光)、キラン(太陽光)、ウジャレ(暁)と、子供の名前に希望を持たせている。デビュー作らしいけど、素晴らしかった。これはネパール版『生まれてはみたけれど』だ。

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【2015年11月25日(水)】


●『タルロ』ペマ・ツェテン監督(チベット)☆

毛沢東語録の一説を暗誦できる羊飼いのタルロ。身分証の写真が必要になり町の写真館へ行くが、髪を整えるために入った美容室の若い女に恋心を抱く。小説版は落語の与太話のように読めたが、静謐なモノクロ画面やチベット情歌(ライ)が、中年独身男タルロの孤独感を深淵なものにしている。

●『消失点』ジャッカワーン・ニンタムロン監督(タイ)☆

事件を追うジャーナリストが乗っていた車の中のビデオ「ショウ#84」。売春宿の部屋を盗撮しているホテルオーナーが録画したビデオ「#85」。写真家だったホテルオーナーが妻子がありながら不倫している様子を描くパート「#86」〜家族を失い僧侶に救いを求める現在。
監督の説明を基に考えると、元写真家が人生の失敗のターニングポイントを探りながら思い出していて、その記憶の断片が浸食しあっている(再構築しようとしている)という構造ではないか。
また、冒頭のジャーナリストの人生と、元写真家の人生がパラレルに見立てられ、遠近法でいうところの消失点(2線が決してまじわることがない無限遠点)が、死によって達成されうる、と。つまり全く関係のない2つの人生が接点をもつのは死によってのみだ、と考察してるのか。
「ジャーナリストと元写真家は鏡像的な存在で、正義感のあるジャーナリストは元写真家の過去の姿・理想だったかもしれない」と監督の弁。理想に向かっていた自分と、やりなおそうとする自分が最後クラッシュするという風にもとれる。 僧侶が還俗するというのもそれに呼応している。
冒頭の新聞記事は監督の両親に起きた実際の事故を扱った当時の記事だという。言わば監督がこの映画を作る着想・創作のスケッチ(思いついたアイデア)を現前させている映画とも言えるのでは。それはビデオのラベルや映画パートに書かれた「ショウ#」=「見せ物」から想像できはしないか。

●『コインロッカーの女』ハン・ジュニ監督(韓国)

ロッカー10番に捨てられていた女児イリョンは仁川の中華街にある闇金業・馬一家に育てられ、義兄弟と暴力的な借金取りをしている。ある日、取り立て先の息子に恋心を抱き、彼女に変化が。組長の「オモニ」はそれを許さない。食口(シック)と反目と継承の物語。圧倒された。


【2015年11月26日(木)】


●『酔生夢死』張作驥(チャン・ツォーチ)監督(台湾)☆

宣伝会社で働くゲイの兄シャンホと市場で働く弟のラット。ラットの兄貴分でホストのショウは従姉とつき合っている。ラットとショウは旅先の高雄で地元ヤクザとトラブっていた。時間軸ではなく情緒で展開する物語は酒酔の感覚。蟻、死魚、傷ついた母親。この世に生れ落ちた者の悲哀。ショウとシャンホが交わるのはやり過ぎ・サービスしすぎ、なようにも思うが、彼らが抱える全ての“ブルーズ”が一塊に成っていく感じもある。『美麗時光』(この映画も病気のお姉さんのエピソードは余計だった)の頃の詩心を取り戻した感ある張作驥の真骨頂。

●『華麗上班族』ジョニー・トー監督(中国・香港)

新人の李想と琪琪は初出勤。実は琪琪はグループ会長・何(周潤發)の娘だった。何の愛人でCEOの張威(張艾嘉)は精鋭達とともに業績を伸ばし、デビッド(陳奕迅)は張と財務担当のソフィ(湯唯)の間で策するが、やがて金融危機が訪れる。全編羅大佑作曲の音楽劇。スケルトンなセットがすごい。正直、カネの臭いしかしない映画。


【2015年11月27日(金)】


●『人質交換』ムエトン・シエガ・ズアソラ監督(フィリピン)

1985年。トーニョとインシアンの息子トントンが誘拐される。華僑シー氏のお抱え運転手として働くトーニョは、犯人からトントンの代わりにシー氏の子供を差し出すよう要求される。極秘裏に捜査本部が設置され作戦は開始された。監督の2才時の経験を元に1テイク全撮影。(8回取り直した)警察権力の表と裏が暴かれる。覆面をしていた人々は反政府活動等で政府に拉致され消えてしまった行方不明者を表している。画面構成・画質がもう少し良かったら。

●『念念』シルビア・チャン監督(台湾)

画家の育美はボクサーの阿翔とつき合っている。妊娠したが、彼には言えず、産む決心もつかないでにいた。また、阿翔は網膜剥離によって選手生命を絶たれ絶望の縁に。一方、育美の兄・育男は台東でガイドをしていた。台北出張中、父親危篤の知らせを受ける。両親の離婚で生き別れた兄妹の再会までを繊細に描く。バランス的に育美と育男の話が中心になるべきだと思うが、張孝全の存在感が際立ってしまい、二人の印象が薄くなってる気がする。


【2015年11月28日(土)】


●『あの日の午後』蔡明亮監督

蔡明亮監督と李康生が今までの半生をざっくばらんに振り返る。ロケ場所は廃屋の一室。(この建物の隣に2人が住むリノベした家があるらしい。)監督は黒いシャツ、小康は白いTシャツとジーパン姿で椅子に座りながらの対談。冒頭から監督は涙ぐんでいる。感情豊かな人なのか、体調悪く、精神的に不安定な時期だったからなのか。
2人は心身ともに恋人同士かと思っていたら実はそうではないらしい。たまたまなのか、洋服も黒と白、陰と陽、2人で1つの不思議な関係だ。監督にかつてイタリア人の恋人がいた話に加え、「監督に伴侶ができるといいね」「もう諦めてる」「選り好みがはげしいから」なんていってる。『西瓜』の時にもらった助成金を持ち逃げされた話、映画祭で様々な海外を訪れた話(苗天さんが亡くなった時はベルリンのホテルにいた)永和という場所に住んでた頃バイクにタンデムしてた時の幸福感、ゲイサウナの入り口で監督が出てくるのを小康が心配して待っていた話、祖父・母など2人の家族の話等、話はつきない。「来世で僕(監督)に会いたい?」「随分先の事だね」「映画の『ルージュ』だね。」〜「来世は僕と監督は交代だね」

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●『ヨーヨー』(65)ピエール・エテックス監督

1925年、全てを手に入れた大富豪だったが、退屈で愛のない生活を送っている。ある日、サーカス団をを招き入れ、女曲馬師に魅了される。大恐慌で全てを失った大富豪は、女曲馬師と2人の間の子供だと判明した息子ヨーヨーとどさ回りの旅をする。月日は経ち、ヨーヨーは経済的に成功して、かつて父の所有していた宮殿を手にいれ、そこでたくさんの人を呼びパーティーをする。かつてそうだったように象が侵入してきて大騒ぎに。ヨーヨーはその象に乗って屋敷を出て行く。退屈に成る前に。夢と現のモノクロ・サイレント。

●『山河故人』賈樟柯監督 ☆

1999年、山西省汾陽。沈濤(趙濤)は雑貨店を営む父親と暮らしている。同級生の晉生と梁子の2人に好意をもたれ、言い寄られながら仲の良い3人の関係を保とうとしている。しかし均衡は破れ、晉生と濤は結婚し、ダラー(到楽)という息子をもうける。一方、内向的な梁子は街から出て行く。
2014年、晉生と濤は離婚し、小学生のダラーは晉生に引き取られ上海で暮らしている。晉生は投資家として成功していた。ある日、濤の父親の突然の死で、ダラーを葬儀に呼び寄せる。ぎこちない母と子。濤は、ダラーと父親がオーストラリアに移住することを知る。
一方、梁子は溶接工になっていた。カザフスタンのアルマトイへ出稼ぎにいこうとするが、体の容態が悪く病院に。濤は梁子に金を渡す。
2025年(!)、オーストラリア。ダラーは19歳。長く外国にいるせいで、中国語ができず、父親とのディスコミュニケーションから確執もあり、青年期特有のいらだちを抱えている。そんなとき、香港からきた中国語教師ミア(張艾嘉)と出会い、彼女に魅かれていく。
未来が描かれていて、びっくり。董子健(少年班でも主演)くんとシルビア・チャン(≒桜井よし子に見えた)の恋愛も驚いた。葉蒨文の曲、ペットショップ・ボーイズの『GO WEST』のダンスも賈樟柯にしては斬新だった。


【2015年11月29日( 日)】

今日は蔡明亮的世界に浸る。
『河』(97)☆☆と『楽日』(03)☆☆ を見る。両方とも劇場で観るのは東京国際映画祭以来。当時、『楽日』は『さらば龍門客桟』名義で観たんだけど、ラストの座席をとらえた超長回しシーンが私の記憶ではもっと長いような気がしていたのだけれど…。でも、傑作にはちがいない。


【2015年12月01日(火)】

有楽町スバル座でツァイ・ミンリャン監督『青春神話』(92/日本公開は95)と短編集『無色』『行者』『無無眠』『秋日』を観て来た。一番古い長編デビュー作と最新作を観た事になる。(その後、新宿に移動して橋口亮輔監督『恋人たち』の強行軍。)

●『青春神話』(92)蔡明亮監督 ☆☆

実に20年ぶりで、ほとんど忘れて初見みたいな感じで観られたけど、「哪吒在此」の赤い字と、ゲームの基盤、監督唯一のオリジナルスコア(?)だけは良く覚えていた。このメロディ不意に頭に浮かぶんだけど、この映画のサントラだったとは。まだあどけない李康生の顔。

●『無色』(12)『行者』(12)『無無眠』(15)『秋日』(15)蔡明亮監督

『無色』『行者』のエンディングにはニーナ・シモンとサミュエル・ホイの曲が。『無無眠』は東京が舞台でサウナの安藤政信がコクトーの絵みたいだった。『秋日』のラストは東宝スタジオ。喫茶店は「沙羅」という所らしい。李康生の顔、悟りを持った顔つきでもあり、老獪さもある感じ。

Feeling Good - Nina Simone (1965). http://youtu.be/oHs98TEYecM
許冠傑 - 一水隔天涯 / 愛你三百六十年 https://youtu.be/tDg0qAOh3Zs


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