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冬の街 [トルコ]

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Nuri Bilge Ceylan Retrospective
トルコの巨匠:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン映画祭
2015年9月29日(火)〜10月3日(土)@アテネ・フランセ文化センター


久しぶりのアテネ・フランセで「ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督映画祭」のプログラムから『カサバー町』(97)『うつろいの季節』(06)『冬の街』(02)+四方田犬彦トークを観て来た。ロードショー公開中の『雪の轍』をまだ観てないのだけど(後日観た)、全作品に共通しているのは、雪景色と滋味ある人物描写。どの作品も素晴らしかった。四方田先生の肉声を聞くのはマシャラーウィ特集以来。

四方田先生はバティック調のシャツで登壇。第三共和制以降に出て来たニュー・ターキッシュ・フィルムの概要、ジェイラン作品の各論・総論。タルコフスキーの影響、『昔々、アナトリア』の主人公の監査医師がチェーホフの投影ではないかという意見に膝を打つ。世界で評価の高い彼の作品だけがトルコ映画ではないことも強調しておられた。


●『カサバー町』(97)

トルコの小さな街に住む一家。時に野外でピクニックをする。かつて英国と戦争をし、インドに連れて来られ、ナガポールで土木建築をしたことのある老帰還兵の父親。挫折とプライドの間で葛藤するインテリの兄。その弟の息子で兵役から戻り戸籍係の職についたものの、辞めて無職の無気力な青年フェイブル。彼はこの街を出て行こうとしている。一方で、子供たちは無邪気に遊び、自然の中で新たな発見をしている。モノクロの美しい画面。監督の姉の原作で、家族・親戚で作った作品。

●『冬の街』(02) ☆☆

冬のイスタンブール。カメラマンをしているマハムトの部屋に、甥のユスフが転がり込んで来る。工場が閉鎖されてしまったので、船員の職を探すため一週間ばかり滞在したいという。ネズミとりの粘着テープに気をつけること、風呂のトイレの使用禁止、タバコは台所で、という約束ごとをいいつけられる。神経質なマハムトと、ズボラな甥。マハムトは別れた妻の間で家の売却について話合っている。妻は新しい夫とカナダへ移住することになっている。港湾(カラキョイ)では船員を募集しておらず、ユスフはムハマトの撮影旅行に助手として同行。だが職探しにユスフは煮詰まってる感。ある日、マハムトの母親が倒れたと妹から電話。病院に見舞い、外からユスフに電話する。「今日、10時くらいまで外にいてくれるか?友達がくるんだ」家に帰ってみると、ユスフは外出しているが、部屋がタバコ臭く、散らかっている。呆れ返るムハマト。夕刻、女友達(娼婦?)を連れ込み、いつものように素っ気なく帰す。ユスフが帰って来ると部屋の約束ごとで喧嘩する。「考えなしの青年はガキより始末におけない。ネズミはとれないが、人間は獲れた!」また別の日、ムハマトは撮影用に銀の懐中時計をさがしていた。いっこうに見つからない。たまりかねてユスフに聞くと黙っている。(実は箱の中にあると知っていた)。ムハマトはユスフのカバンを開けて疑っている。涙目になるユスフ。夜中、物音がする。ネズミがテープに引っかかっている。ムハマトは明日管理人に処分を頼むというが、一晩中鳴いているのは困るのでユスフが壁に打ち付けて殺す。次の日、ムハマトは別れた妻を一目見に空港へ行く。帰るとユスフはいなくなっていた。寂寥感。ムハマトはユスフが置いていったタバコを一本吸う。…これは傑作だった。

●『うつろいの季節』(06) ☆

ドイツ人観光客が増えているカシュの町。バカンス中の大学講師の男と、その彼女バハール(TVで美術の仕事をしている)。友人たちとの食事の最中、変な笑い声をあげるバハール。仲睦まじかった2人は、いつしかボタンを掛け違え、うまくいかなくなった。バイクに乗っていたとき、女は男を目隠しし、あわや大事故というところまで。「もう電話しないで」2人は別れるバスを見送る男。その後、男は、既知のセラプという女と懇ろになる。しかしバハールのことが忘れられない。彼女がTVの仕事で東部に行っていると耳にする。
冬の町で、男はバハールに再会する。女はそっけない素振りをする。「論文は?」「まだだ。資料館に行くついでに寄った」バスの中で泣いてる彼女に気づく男。「なぜここへ?」「君に会いたくて。僕は生まれ変わった。こんな仕事やめて一緒に帰ろう」「別れたあとセラプと?」気まずい2人。
男の泊まってるホテルにやってきたバハール。一夜を過ごした後、朝、夢の話をする。「緩やかな草原で飛ぶ夢。墓地みたいな場所があって、母が生きていて私に手をふっている。温かい夢だったわ」男はぶっきらぼうに「今日はは何時から撮影?」と聞くと、急に顔が曇るバハール。「9時よ」「遅れちゃまずいな」永い沈黙。「僕は空港へ行くよ」TVの撮影現場。飛行機の音。冒頭シーンと同じ構図のカット(夏と冬)。監督と奥さんが体をはって役者として出演した。息子アヤズに捧げられた。

●『スリー・モンキーズ』(08)

ある政治家のひき逃げ事件の身代わりとして服役した運転手。妻子の生活のために選択したことだったが、妻は政治家との性愛に溺れ、浪人生の息子はその事実を知り心を病む。一家は崩壊へ向かうが、そんな折、男が出所してくる。人間の業を赤裸々に描くサスペンス。


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●『昔々、アナトリアで』(11) ☆☆

ある殺人事件の実況見分を行うために夜通し遺体遺棄現場を探す警察の一行。事件の全容ははっきりさせず、想像の余地を持たせながら、監査医と登場人物の人生の闇を照射する。ロングショットと会話劇の妙。特に監察医と検事の会話が印象的。いぶし銀のような硬質な作品。


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●『雪の轍』

カッパドキアのホテルオーナーの地主アイドゥンと慈善活動をする若い妻ニハル。家賃を払えないハムディ伝導師一家に対する処遇が絡み、2人の関係に決定的なヒビが入る。「善意の道は地獄へ通じる」というアフォリズムを基に世界を語る。やはり会話劇と雪景色が秀逸。ハムディの無職の兄がとった行動に思わず「あっ!」と声を上げてしまった。日本人観光客が出て来るが、その国の深い生活事情を知らない観光客のギャップも。劇中『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』のロケ地とオマー・シャリフの話題も。


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