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ポケットの花 [マレーシア]

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"Flower in the pocket" film by Riew Seng Tat



第21回東京国際映画祭開催中。(2008年10月18日 ~26日)
今年は仕事のスケージュール上、ほとんど観られないのではないかと諦めていたのですが、ちょっと間が空いたようなので、意外と例年並みに観ています。

「当たり」だったのは、タイトルがとてもぬるい感じのマレーシア映画『ポケットの花』(2007年 リュウ・センタック監督→上映時表記。現在はリュウ・センタットが一般的)だった。正直言うと全く期待していなかったのだが、監督の追求している笑い(?)のセンスがとても独特で新しく、思いっきりツボにハマってしまった。主人公の中華系マレーシア人の小学生兄弟、マー・リーオム&マー・リーアーは、小津の『お早よう』、清水の『風の中の子供』に登場する兄弟に匹敵しそうな愛すべきガキんちょだ。尚早かもしれないが、彼らの成長ぶりを観るためにもシリーズ化を望みたいと思う。


Flower In The Pocket The kids promo


マー・リーオム&マー・リーアーの兄弟はどちらも先生に叱られてばかりいる落ちこぼれの部類に入る問題児。学校の外では道草とイタズラに明け暮れている。一方、場面は変わってマネキン工房で働く坊主頭の一人の男。胸から透明な液体が出る病気?に悩んでいる。おしゃべりのマレー系の同僚と仕事に勤しんでいるのだが、実はこの男が兄弟の父親であることが、しばらくたってから判明する。(この親子、笑ってしまうくらいそっくりなのだが、実子なのだろうか?)

母親はいない。一家は裕福とはいえない共同住宅に住んでいる。このシングルファーザーはほとんど子供の面倒は見ない。子供たちは協力し合いながら、学校に行き、食事をし、宿題を片付け、眠りにつく。父親は夜遅く(明け方?)帰宅してテーブルに小遣いを置いてソファーで寝る。兄弟が学校へ出かける時に、自分たちが使っていたタオルケットを父親にかけてやるのが日課。(この辺が泣かせる)ある日のこと、兄弟が道草中に子犬を見つけ、家で飼いはじめた頃から事件がおこる。そして父親が子供たちの不遇を知るようになる。ラストシーン、親子が軽トラックの座席で揺られているシーンがとてもいい。

冒頭に、中華系の小学生にマレー語を教える授業の風景があり、その様子はずいぶん抑圧的に映る。それはプミプトラ政策を連想させる。弟が野グソを垂れた後、マレー語の授業のノートで尻を拭くシーンがあり、かなり辛辣な批判にもとれる。また、対比として、兄弟が仲良くなるマレー系の女の子が登場する。この子も実に個性的で楽しい。彼女の家も母親とおばあちゃんとの3人暮らしだが、母親の子供に対する配慮は行き届いているのだ。
表層のユーモアが実は深い暗部から来ていたことが、終盤に成って分かる。簡単に言ってしまえばブラックユーモアなのだが。マレーシアからまた新たな才能の出現か。

(追記)父親役は『私たちがまた恋に落ちる前に』のジェームス・リー監督なのだそうだ。子役二人も実の兄弟ではないようだ。


今日は同じマレーシア映画のヤスミン・アハマド監督の新作『ムアラフ〜改心』を観て来た。詳しくはかかないけれど、キリスト教とイスラム教の原理主義の世界的な対立を視野に入れつつ、「啓典の民」について言及していた。ユーモアと優しい言葉を持った素晴らしい作品だった。いつもながら役者の人選がいい。あらゆる点でうまい監督だなと改めて思う。(ただタミル系の教師の扱いが気になったけれど)

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コメント 2

Shion

モンキーカネコ様、初めまして。
私はDVDで見ましたが、『ポケットの花』はとても気に入っている映画です。マレー系の女の子の造型が面白かったですね。あの子、最初は男の子の振りをして馬兄弟と遊んでいたクセに(モスリムの場合、ある程度の年齢からは女の子が異民族の男の子とサシで遊んでるとか…たぶん宗教的にマズイんじゃないかと思います)、うちに兄弟を連れて行く時には、もうすっかりその設定を忘れてたり(笑)。

本当は深刻なテーマなのに、それをうまく緩さで包み込み、最後は希望の持てるエンディングで…あの兄弟のためにもお父さんのためにも、ホントによかったなぁ~と思いました。

リュウ・センタッ監督の、あの独特のユーモア感覚は天性のもののようです。彼の短編もいくつか見たのですが、今までにあまり見た事のない感じの設定、独特のユーモア感がありつつ、後味はちょっと切ないというのは共通しているように思います。ホントに次回作が楽しみです。

TIFFでの2回目の上映日には、助監督のアイシンさんが来てQ&Aに答えていましたが、彼女によれば馬兄弟・弟の教室でのシーンは、中華系への差別ではないそうです。きちんと宿題をやってこない子、ちゃんと答えない子への当然の待遇らしいです。あの兄弟はマレー系の公立小学校に通っている設定なので…確かに共通語であるマレー語が話せないって事は、先生としてもどうしょうもなく困る事だろうと思います(笑)。

ちなみに今回の『ポケットの花』の馬兄弟の弟役の子は、『レイン・ドッグス』のホー・ユーハン監督が昨年度釜山映画祭の要請で作った短編にも主演しています。あの子はエラく演技度胸のある才能のある子らしいですよ。

私のページでも時々、マレーシアン・ニューウェーヴのいろいろな作品や動きについて紹介しています。よろしければ覗きに来てくださいね!
by Shion (2008-11-08 04:50) 

モンキーカネコ

shionさん、カキコミありがとうございました。
僕の舌足らずで誤解を生みそうな文章に補足していただいて感謝でします!Shionさんのブログは何度か拝見したことがありました。
今後ともよろしくお願いします。

リュウ監督の短編を観ているんですね。羨ましいです。ヤスミン監督、ホー監督に次いで、マレーシアは今後が楽しみな作家がぞくぞく登場していますね。

ちょっと大げさな書き方をしてしまいましたが、マレー語の授業のシーンは確かに宿題をやってこなかったお仕置き以外のなんでもないのですが、差別というのではなくて、多民族国家ゆえの教育制度の背景を考えさせられるシーンではあったと思います。監督はそれを狙っているような気がします。今回のTIFFはマイノイティを扱った作品が多いので、うがった見方をしてしまいがちではあるのですが。
兄弟は素人っぽいところ、演技してない(できてない?)ところがいいですね。早くホー・ユーハン監督の新作も観たいです。

by モンキーカネコ (2008-11-10 23:01) 

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